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インパクト投資のメインストリーム化を進め
社会起業家支援のエコシステムを確立する

一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
理事長 大野修一

このたび、2022年度を迎えるにあたり、関係者の皆様にご挨拶を申し上げます。

2021年度は、コロナ禍が続く厳しい条件下ながら、社会変革推進財団(SIIF)のテーマであるイン パクト投資や社会的企業の分野で、大きな進展が得られました。

思い返せば、日本で初めて、インパクト投資推進に向けた組織だった動きとして、「G8社会的インパクト投資タスクフォース(現 Global Steering Group for Impact Investment:GSG)」日本委員会が始まったのが、2014年のことでした。それから7年目の2021年11月29日、ついに21の国内金 融機関が「インパクト志向金融宣言」に署名するところとなりました。これに先立つ9月には、SIIF主催の「インパクト投資フォーラム」にオンラインながら360名の方が参加し、登壇した大手金融機関トップから「日本でも、今まさにインパクト投資がメインストリーム化する兆しがある」という力強い発言をいただいています。

2021年度はまた、改めて、社会起業家に期待が集まった年でもありました。コロナ禍によって一層はっきりしたことは、政治や公共セクターの限界と、個人や民間セクターの主体的な役割の重要性であり、すなわち、税金を元にした公的資源と、ダイナミックな民間のノウハウや資金との協業の必要性と可能性です。これにより、社会課題を意識した起業家と、起業家を支える投資家に期待が集まりました。

2021年度も、SIIFは自己資金や休眠預金による投資活動や伴走支援を通じて社会起業家をサポートして参りました。これらの活動によりSIIFは、インパクト投資や社会起業家支援分野の中心的な組織として広く認知されるようになりました。その結果、複数の金融機関や富裕層から、有償でインパクト投資やフィランソロピー活動の助言を求められています。

とはいえ、日本のインパクト投資残高は、いまだ欧米諸国と比べると大きく見劣りします。世界経済(GDP)に占める割合が約5%の経済大国でありながら、インパクト投資残高は世界の約1%に過ぎません。SIIFが行った意識調査では、一般のインパクト投資の認知度はわずか6%です。インパクト投資がようやくメインストリーム化したとはいえ、ごく一部の金融機関・機関投資家等の段 階にとどまっています。

社会起業家支援など他分野でも、まだ課題は山積しています。これらを乗り越えるため、SIIFでは、関係者全員で共有できる中長期戦略を策定中です。

思えば、コロナ禍に明け暮れた2年間に私たちが失ったものは、有形無形を問わず多大です。しかし、マイナスばかりではありません。人間や社会のシステムの弱点が明らかになる一方で、人と人のぬくもりの価値が改めてクローズアップされ、未来をよりよくするための多くのヒントが示されました。災禍から変革を創造するためには、今をより深く理解し、本質を見抜く力、洞察力、想像力と行動が必要です。

知性と感性のアンテナを張り巡らせ、想像力をフル稼働させて、全てのヒントを吸収し、よりよい社会に向かって前進していきましょう。

インパクト志向の資源循環とは

社会課題解決や価値創造のための活動で、社会的インパクトを重視することを基本に、投資とは言えない資金(寄付や助成に近い資金)や人材、知見、その他の経済的価値では測れない社会資本、人的資本、感情資本等の価値の循環を指します。旧SIIFは、インパクト投資の市場構築を目標としていましたが、合併後は、より柔軟な資金提供、すなわち経済的リターンがそれほど見込めないため「投資」とは言えないが、寄付や助成よりは支援先にとって責任ある活動が求められる資金提供の方法(例えば元本だけは返ってくるなど)も視野に入れた支援も検討しています。私たちは資金提供者のリスク許容度にあわせた、より柔軟な資金提供が社会課題の解決に活かされる状態を目指しています。

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