トップメッセージ

2026年度を迎えるにあたって

公益財団法人社会変革推進財団(SIIF)

理事長 大野修一

日頃より当財団の活動にご理解とご支援を賜っている皆さまに、心より御礼申し上げますとともに、穏やかな新年度をお迎えのこととお慶び申し上げます。

2025年を振り返りますと、日本国内では記録的な猛暑や豪雨などの異常気象が相次ぎ、自然環境の変化を身近に感じる一年となりました。熊の出没による被害も各地で報告されるなど、人と自然の共生のあり方が改めて問われています。
また経済面では、円安の長期化によりインバウンド需要が回復し、一定の活気が戻る一方で、日本がかつてのような経済大国として成長を続ける時代は、終焉を迎えつつあるようにも感じられます。今後は、地域ごとに育まれてきた文化や歴史、自然といったユニークな価値を活かした「観光立国」としての道が、より重要になっていくのではないでしょうか。

海外に目を向けると、予想以上に長期化するウクライナ戦争は、国際秩序に大きな影響を及ぼし続けています。加えて、米国におけるトランプ政権の振れ幅の大きな外交姿勢や、日中関係の緊張、その背景にある中国経済の停滞など、世界全体の先行きには依然として不透明さが漂っています。

このような環境下において、当財団は引き続き、柔軟な発想と行動力を強みとし、新しい技術や価値観を積極的に取り入れながら、誰もが夢を持ち、希望を描ける社会の実現に向けて、経済を起点に社会をより良くする活動に取り組んでまいりました。

2025年は、「機会格差」「地域活性化」「ヘルスケア」という三つの社会課題領域を軸に、システムチェンジの創出を目指して多様な分野でリーダーシップを発揮し、着実な成果を上げることができた一年でもありました。
また、インパクト投資の推進やインパクトスタートアップ支援など、さまざまな文脈で関連省庁をサポートする活動を通じて、政策の形成および推進にも寄与することができました。

ここで、こうした活動の中から、いくつか象徴的な取り組みをご紹介します。

① インパクト投資分野における世界的リーダーの集まりの開催
2025年5月、京都にて、インパクト投資分野の世界的ネットワークであるGSG Impactの各国代表が一堂に会する「Global Leadership Meeting」が開催されました。約50か国から130名を超える金融機関関係者や政府の政策立案者が参加した本会議は、当財団が主導して日本招致を実現し、日本事務局として企画から実行までを担いました。
本会議を通じて、日本ならではのインパクト投資の取り組みを世界に発信し、強い印象を残す機会となりました。

② 休眠預金を活用した基金(プラスソーシャルインベストメント株式会社による近畿四国ソーシャルインパクトファンド)への参加
2019年度より運用が始まった「休眠預金事業」は、10年以上入出金のない休眠預金を原資として、公益活動に取り組む実行団体を支援する制度です。これまでは助成のみが認められていましたが、新たに「出資」が可能となり、当財団設立以来のパートナーであるPSI社が、初の出資事業として採択されました。
PSI社は2025年6月に「近畿四国ソーシャルインパクトファンド」を設立し、当財団も有限責任組合員として参画しています。

③ 上場株式を通じたシステムチェンジ投資への挑戦
2025年には、三菱UFJ信託銀行とかんぽ生命保険により、日本で初めてとなる上場株式を対象としたシステムチェンジ投資が開始されました。本取り組みでは、かんぽ生命保険がアセットオーナーとして出資し、三菱UFJ信託銀行が運用を担い、男女間の賃金格差や女性管理職比率の低さといったジェンダーギャップの是正をテーマに投資が行われています。
当財団は、三菱UFJ信託銀行のアドバイザーとして構想段階から関与し、インパクト投資およびシステムチェンジに関する知見を提供してまいりました。上場市場という主流の金融領域において社会課題解決を目指す本取り組みは、日本のインパクト・エコノミーの発展において重要な一歩になるものと考えています。

新年度においても、当財団は国内にとどまることなく、日本およびアジアの文化や価値観に立脚しながら、グローバルな貢献を目指してまいります。これまで欧米が牽引してきたインパクト・エコノミーの潮流に対し、日本からも積極的に発信し、確かな存在感を示せる組織でありたいと考えています。

すべてを一度に変えることはできませんが、私たちが関わる現場での実践や、これまで積み重ねてきた政策提言を通じて、確かな一歩を重ねていきたいと考えています。

結びに、本年度が皆さま一人ひとりにとって、希望と実感に満ちた一年となりますことを祈念し、新年度のご挨拶といたします。